東海村JCO臨界事故

▼東海村臨界事故に対する声明文

東海臨界事故に対する声明文


原子力行政を問い直す宗教者の会

 私たちはこれまでそれぞれの宗教信条に照らし、自身を問い直しながらこの国の原子力行政を問い、そこに許し難い欺瞞と差別の構造を見出し、破滅に向かう行く末を憂慮し警鐘を鳴らしてきた。これらが今、恐怖感を伴いながら実感される事態になった。

 1999年9月30日発生した茨城県東海村の臨界被曝事故は、事故の実態及びそれの対処の状況に於いて、原子力行政が既に破綻しまた機能し得ない現実を思い知らせることになった。そればかりか、私たちが何も知らされないまま被曝を強要され、未来にわたって「原子の火」に殺されるシナリオさえもできつつある。私たちは、この深刻な現実に直面し、私たちが確認し訴えていく最後の機会になるのではないかとの危機感の中で、ここに緊急集会を東京で開催し、主に以下の点を押さえながらこの度の事故の状況を整理し、国との申し入れ・対話を行った。

(Ⅰ)これは国が中性子爆弾を住民に浴びせた「無差別殺人」だ

 
①事故に於ける住民被曝
 臨界という絶対起こしてはならない基本中の基本を踏み誤ったこの度の事故は、それが何ら防護のない所で発生することによって、必然的に大量の中性子線を周囲に撒き散らすことになった。かつ、強い放射線への緊急対処を講ずべき事故直後の4~5時間を放置することによって住民に取り返しのつかない被曝を与え、その後の避難及び退避措置は、本来発生源からより遠くに離れるべき防災の基本を無視し、妊婦や乳幼児を含めた住民に、さらなる被曝を求めることになった。しかのみならず、放射性ヨウ素他の放射性物質も事業所から垂れ流しにされていた事実が、政府が「終息宣言」「安全宣言」を迅速に出した後に明らかになった。

 このようにこの度は、JCO事業所の臨界事故に、行政の人為的あるいは無策故の被曝が加わった事実がある。その責任は大いに問題にされなければならない。特に、国が事故後に地元住民に行った「がん、白血病などの晩発性の影響は実効線量で約200ミリシーベルト以上でわずかながら増加が認められるが、50ミリシーベルトより小さければ心配ない」との説明は、一般人の被曝線量限度を年間1ミリシーベルトに定めたICRPの勧告値をいきなり50倍許容させることを意味し、年間5ミリシーベルト以上の被曝で自血病が労災認定される基準に照らしても、あまりに暴力的と言わざるを得ない。

 ②緊急作業による労働者被曝
 臨界を終息させるための水抜き作業等でJCO社員が大量の「計画被曝」を余儀なくされた。緊急作業時の職業人被曝線量の上限値100ミリシーベルトの根拠は問題であるが、今回はそれすらも越えて被曝する労働者が続出した。事故現場で大量被曝した3名の作業員以外にも多くの人がこのように職業的な被曝を強要される事態となったことについて、その責任を問うていかなければならない。

 ③データの公開と正確で納得のいく説明を求める
 この度の事故に於ける避難・退避措置及びそれらの解除の根拠となったであろう住民の中性子線被曝線量データはしぱらく明らかにされなかった。中性子線の距離、放射性物質の核種やその拡散状況、被曝の実態の正確な把握は住民にとって自身の命を守る最低限の人権的次元のものだが、いまだ不透明のままだ。国はこれらの基本データを公開した上、正確で納得のいく説明を施す義務がある。

(Ⅱ)原子力防災を国に任せては危ない

 ①「原子力災害対策特別措置法」は
 原子力防災に関しての新法の法制化が急ぎ進められている。これは、国の一元的統制の下で権限を国に集中させて住民対策も講じられ、情報管理も一段と進むことが懸念される極めて危険な新法である。

 この度の事故に於いて、国は対策本部設置等の事故への対応が著しく遅れ、適切な情報提供も行っていない。国は何もなし得なかったばかりか、その後の措置では住民への不要な被曝を強いることになった。今回の事態を踏まえれば、初動できなかった国が地元自治体に替わって原子力防災の独占的一元的管理を強化することは、住民の安全面からも防災の基本からしても大いに問題であることがわかる。新法制定によって、住民を汚染から脱出させるよりむしろ閉じ込める方向、住民の避難行動を今まで以上に妨げる方向により作用されることに危惧感を禁じ得ない。住民の生命ではなく、国の原子力推進体制を守るために、住民が事実を知らされないまま行政によって殺される状況が生み出されることが予測される。同法案の廃案と抜本的な再検討を求めたい。

 ②「2000年問題」との関連で
 原発の運転に関し、「2000年間題」が大いに憂慮されている。基幹部分の対策がなされようとも、人為ミスを含んだ些細な原因で複雑に事故を招き寄せる未知なる不安は解消されておらず、京都での大規模な停電等に見られるような前兆的なトラブル例も一部で起きている。

 臨界事故後の折りでもあり、当面、緊急で最良の防災対策として、電力需要の底をつく年末年始に原発や核施設の停止、総点検を実行すべきである。

(Ⅲ)原子力・エネルギー政策の転換を

 この国の原発・核施設の事故はこのところ頻発し、しかも明らかにレベル・アップが進んでいる。この度の事故は、政府発表ではレベル4だが実際には所外へのリスクを伴っており、レベル5の事態といえる。ここで根本的な政策転換をせず、これらの事故を軽視し続けるならば、近い将来レベル6~7クラスかそれ以上のカタストロフィは必定である。

 言葉を替えれば、政策転換のチャンスということだ。世界的な原発政策特に再処理路線からの撤退、再生可能なエネルギーの選択という潮流からしても、国のメンツを何ら損なうことなく大転換が可能なはずである。

 私たちが97年10月にまとめた「『国策』=原子力政策の転換を求める提言」
  1.再処理・プルトニウム利用からの撤退
  2.原発不増設、アジアヘの原発輸出禁止
  3.既設原発とその核廃棄物の後始末
  4.被曝労働者の安全・救護対策
  5.省エネ対策・新エネ開発
これらの真剣な検討が、この度の事故による世論の変化を踏まえ、民主的で公明正大な議論の上でなされることを要求する。
                                  1999年11月16日

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