報告 「敦賀」全国集会 (99,9,8~9,9)

報告 「敦賀」全国集会 (99,9,8~9,9)
市川 哲 (兵庫・日本キリスト教団)
 第5回全国集会は、敦賀市・北陸トンネル温泉「北国ホテル」というところで開かれた。宿泊団体名を書いた玄関の看板のなかには、多分原発新規立地予定地から”アゴ足付き”で招待された視察旅行かな、と思われる名前もあった。不況が続く中、もしかするとホテルとしても「問い直す宗教者の会」に会場を貸すというのは少しは勇気が要るのかもしれない。敬意を表する意味で飲んで大騒ぎするのだけは止めとこう、と宗教者らしい(?)思いを少し抱いて参加した。

 集会日程は『フォ-ラムNO2』に掲載してあるので、各問題提起のうちいくつかの感想を中心に書きたいと思う。今回は被ばく労働の実態を探ることをテ-マに設定したので、嶋橋美智子さん、高木和美さん、そして実際に被ばく労働に携われた方からの話はいずれも事実に基く重みがあった。

 とくに嶋橋さんについては、最初は息子さんの状態が分からず、むしろ良い企業に就職した位に思っておられたこと。亡くされてから後、初めてことの重大性に気づいたこと。弔慰金と引き換えの形で真相を公表しないよう圧力を受けたこと。企業に何回も申し入れて後やっと返却された放射線管理手帳が、明らかに改ざんされており、逆に原子力産業界が実態隠しのために業界ぐるみでやっている手口が図らずも露呈したこと。息子さんの尊い犠牲があって初めて白血病が被ばくと関連あることを認められ、労災認定の道が開かれたこと。これら体験に基く話のなかで嶋橋さんの苦闘してこられた過程が事実として語られただけでなく、”国策”のためかけがえのない肉親の命が虫ケラのごとく奪われた無念さが迫る内容であった。

 次いで保健婦として原発労働者と接した経験をもつ高木さんは、被ばく労働者が生み出され使い続けられるシステムを学問的に論じた。その内容も去ることながら、中でも資料として出された若狭地域を中心とした被ばく労働者からの聞き書きは、産業構造のなかで底辺付近に位置する労働者がいかに危険な状況に追い込まれているかを雄弁に物語っている。行政等の調査が一向になされない中、机上の議論だけでなくこのような地道な作業の積み重ねと好評の大切さを感じた。

 その意味で被ばく労働に携われた2人の方からの今集会での証言のように、被ばく体験を公表される用意のある方をもっと発掘し、事実の積み重ねで原子力行政に対し政策変更を迫っていく必要があるだろう。

 後のセッションでの藤田祐幸さんの問題提起は、事実上今回の中心の講演であり、多くのことを学ばせていただいた。福島第1原発でのシュラウド交換作業がいかに多量に被ばく労働者を使い捨てているかの事実を資料に基いて検証。野宿労働者のような立場の人々がどれだけ被ばく労働にかり出されているか、自分自身の調査に基く報告。「放射線管理手帳」制度が実は他の危険労働従事者に交付される「健康管理手帳」と異なり法的根拠がなく労働者保護にほとんど役立っていない事実の説明。どれをとっても大切な情報を与えていただいたことに感謝したい。

 特に私にとって、野宿労働者大量被ばくの問題は、阪神・淡路大震災被災地での救援活動にかかわる者として、震災後急増する野宿労働者の支援に苦慮する現状のなか、自らにも重い宿題を突き付けられたと感じている。「棄民政策」「土建行政」というキ-ワ-ドで震災と原発が見事につながっていることを改めて痛感した。

 今回の集会も2日目の協議も含め有意義な時間を共有でき、地元に戻って還元すべき多くを学んだ。兵庫の教会でも新たに但馬の牧師を中心に隣接の久美浜原発建設反対運動に関わりをもつ動きが始まっており、他人ごとでなく自らの問題として捕らえる宗教者がこれからも増えていくと思われる。連帯のなかで今回の情報をもまた、共有して行きたいと考えている。

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