「敦賀」全国集会へのよびかけ

第5回 原子力行政を問い直す宗教者の会
「敦賀」全国集会のよびかけ
テーマ 「宗教者として被曝労働を問う」

 ――「原発で人は死なない」と推進派は言います。ところが現実死んでいるのです。‥今、 原子力というものに関して、現実を直視していただきたい。そして、命がけでこの運動を 広げていって欲しいと思います。でなければ犠牲者がどんどん広がっていきます。‥私は 僧侶ですから、仏の意志を縦いではたらかなければいけないのです。こんな犠牲者を作っ たらいかんです。これが私の使命だと思っております。 ――
(故・立花正寛氏 『結成全国 集会報告集』より)

 93年7月、本会の結成集会で「犠牲者を作るな」と叫んだ地元・敦賀の立花さんは翌年春、ガン死した。まさに遺言となった彼の言葉を私たちはどう受け止め、歩んできただろうか。

 福島第一原発3号炉で97年に開始されたシュラウド交換作業が、当初の予定を越え1年近くかかって終了。年間20~25ミリシーベルトを被曝した労働者(近年の各原発の被曝労働では、ほとんど年間20ミリシーベルト以下)がこの交換作業だけで106人にのぼった。この大規模な被曝作業は、同原発2号炉でも実施され、そして今、93年の結成集会において廃炉を要求した敦賀1号炉において、強行されようとしている。
 「シュラウド」とは原子炉の炉心を包む巨大な円筒形の構造体で、この付近は放射線が強く本来人間の入る場所ではない。また、シュラウド(shroud)の語は「経かたびら」つまり「死に装束」を意味する。設計時には想定されていなかったこれの交換作業によって、労働者の犠牲と引きかえに老朽原子炉の延命が図られている。

 そして、この危険な「屍衣」交換作業には、米国の黒人労働者や日雇いの寄せ場・野宿労働者が投じられ、補償もなく闇に捨てられている可能性が高い。寄せ場で、「原発の仕事に行くな!殺されるぞ!」とビラが配られても、この不況下で今、この時間にも、多くの労働者が集められ、被曝させられ、捨てられていく。一方、地元の原発労働者や関連会社の社員も定検などで日夜被曝している。――「こんな犠牲者を作ったらいかんです」
 現実には、そうした犠牲者の情報は限られ、闇の中に葬られ、顧みられることが極端に少ない。が、私たちがその中に甘んじていることはもはや許されない。

 今秋9月、私たちの会結成の地・敦賀市で、〈労働者被曝〉をメインテーマとして全国集会をもつ。それは、被曝に関する差し迫ったあまたの課題に加え、私たち宗教者の原点をも照らし出すものとなろう。6年前の結成集会では「原子力行政を問うことは、自身の宗教的信念を問い直すことでもある」と呼びかけた。今日、新たに犠牲者が作り出されようとしている被曝問題を通して、この会の存在理由と私たち自身が問い直されなければならない。
 原子力に依らないエネルギーと、誰をも犠牲にすることのない社会・文明を求めて、私たちは確かな歩みを進めたい。
   暗く深い闇から、光を見出して、共々に歩もう。
   もう一度、敦賀の地から。

1999年7月20日
原子力行政を問い直す宗教者の会
集会代表 西條由紀夫(バプテスト連盟)